イルカ肉の水銀汚染
~日本における新たな水俣病~
海洋で生活しているイルカ・クジラ類は、魚や他の生命体の最終捕食者です。今日の海は、沿岸水域ばかりでなく公海域においてさえ、水銀やPCB、重金属によって著しく汚染されています。
水 銀は、大きな影響力をもつ神経毒物であり、たとえ低濃度であっても神経組織に損傷を与えることが科学者によって指摘されています。発育中の胎児や子供たち にとって、水銀は特に危険です。日本の市場に出回っている食用のイルカ肉や鯨肉の分析検査によって、イルカ肉や鯨肉には危険な毒物が多量に含まれているこ とが、繰り返し証明されています。
日本政府は日本の一般市民を犠牲にしたまま、水俣病(*)の水銀禍をいまだに無視し続けていますが、イルカ肉の水銀レベルは、1950年代に水俣病を引き起こした魚の水銀汚染レベルより高いと考えられています。
2001~2003年:
EIA(イーアイエー:Environmental Investigation Agency)が、日本のスーパーから72の小型クジラ及びイルカの肉と脂肪製品を購入し、福岡の第一薬科大学に依頼して化学分析を行なった結果、そのう ちの6割の製品が、日本政府(厚生労働省)の暫定的に許可した水銀レベルを上回っていることが明らかになりました。分析による平均的水銀レベルは 1.88ppmで、日本政府が定めた最大許容値の5倍に近く、また、メチル水銀の平均濃度は最大許容値の約4倍の1.11ppmでした。
ま た、EIAや他の団体からの依頼を受けて行なわれたDNA分析の結果から、イルカ類の製品を鯨肉としてラベル付けして販売する不正行為が、広く行なわれて いることが明らかになりました。鯨肉として売られていたバンドウイルカの肉は、許可されているレベルの50倍の水銀を含んでいました。
2004年2月:
EIAと協力して、複数の自主調査員が、インターネットを通して日本の会社である(株)石巻水産から広範囲にわたる製品を購入して、汚染物質の分析を日本 で行ないました。すると鯨大和煮缶詰の3つから平均1.10ppmの水銀と、0.67ppmnのメチル水銀が検出されました。これは厚生労働省が定めた暫 定安全規制値より3倍くらい高い数値でした。
2004年:
鯨肉や何種類かの魚類を食べて水銀を体に取り込むと、子供の脳の発達に有害な影響が出ることが、科学的調査で明らかになりました。このため、EIAが指摘 した、健康上の指導基準を上回る水銀を含んでいるイルカ類の肉を、日本政府が販売し続けることへの懸念が、再燃しています。
いっ ぽう、デンマーク領のフェロー諸島での14年以上にわたる長期調査によって、次のことが判明しています。すなわち、出生後に子供がメチル水銀の影響を受け ると、子供の発達に問題が生じ、その後、水銀を含んだ製品を食べ続けると、その障害が悪化することが分かったのです。また、胎児のときにメチル水銀の摂取 によって受けた損傷は、その後一生にわたって取り除くことができない永続的なものになり得ることも分かり、このことから、メチル水銀を含む食物を食べるこ とに対する人々の懸念が続いています。しかし、同諸島の人々は、ゴンドウクジラの肉のほかにも、豊富な魚介類を食べているため、高いレベルの水銀やメチル 水銀を摂取しています。14歳以下の子供がメチル水銀の影響を受けると、子供たちの聴力の発達に遅れが出る可能性があることが2004年2月の「小児科学 ジャーナル」(pp.177~183)に記されています。
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| ゴンドウクジラ腹肉3.82ppm 暫定安全規制値の9.55倍 |
2006年11月~12月:
11 月7日に「イルカを救うための連盟」のメンバーである日本の「エルザ自然保護の会」が太地漁業協同組合の直営スーパーで2パックのゴンドウクジラの肉を購 入し、茨城県薬剤師会公衆衛生検査センターに分析を依頼したところ、そのうちの1パックから厚生労働省が定めた暫定安全規制値0.4ppmの9.55倍で ある3.82ppmの水銀が検出され、また、残りの1パックからも3.275倍に当たる1.31ppmの水銀が検出されました。
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| ゴンドウクジラ1.31ppm 暫定安全規制値の約3.3倍 |
12月22日、ジャパンタイムズがスーパーマーケット・オークワ新宮店でイルカ肉を無作為に選んで分析検査をしたところ、総水銀濃度は暫定安全規制値0.4ppmの13.5倍に達する5.40ppmを示しました。
12月26日、㈱オークワの食品部の取締役である神吉康成氏は、全店において今後、永久的にイルカ肉の販売を禁止することにしました。複合企業であるこの 大手チェーンストアーは、薬局、映画館、ホームセンター、スポーツクラブ、娯楽施設も経営しています。
結論:
以上の通りイルカの肉は食用にするべきではないという科学的な証拠があるにもかかわらず、日本政府は、捕鯨を促進し、イルカを殺し続けるために、この科学 的証拠を無視し続けています。しかし、前記の通りイルカ肉を食用にすれば、水俣を上回る死の危険が現実のものになり、胎児が被害を蒙り、また赤ん坊は永続 的な神経毒物による著しい被害を受けることが、科学的に証明されています。
日 本において、食用のためにイルカやクジラを殺すことは、日本の人々に有毒食品を与えることです。日本市場で、水銀が含有されているイルカやクジラの肉を販 売することは、すぐに中止すべきです。そして個人商店やマーケットは、日本政府が実際に行動を起こして中止に踏み切るまで待つことなく、このような有毒食 品の販売を禁止すべきです。
(*)「水俣病」 50 年以上前、九州の(株)新日本窒素肥料は、水銀を含んだ排水を水俣湾近くに廃棄し続けました。このことから、湾岸の住民は、生体濃縮された水銀を含む湾内 の魚介類を摂取することになり、甚大な健康被害を蒙りました。その結果、水俣病に罹った子供が生まれ、この病気のために神経組織が損傷を受け、体の動きが コントロールできなくなったり、言語障害を起こしたり、時には死に至ることもありました。1950年代、初めて水俣病が確認され、100人の犠牲者が認定 されました。
水俣病の被害者はおよそ10、000人を数え、少なくとも3000人以上の人が死亡しています。この水俣病問題はいまでも続いており、日本政府の対応の遅れが問題になっています。




